農家の個性

学校であったり、会社であったり、人の数だけ違った考えがあります。それは農業界も同じで、野菜の作り方や使う肥料、食に対する想いも人それぞれ。深く関わっていくと、実は、とても各々の個性が出る業界だと分かってきます。

 

というところで本日は、有機無農薬栽培の歴史と進化の話を中心に、農家の個性とはどういうものかをご紹介します。

 

有機無農薬栽培とは

 

日本の市場のほとんど(おそらく95%以上)の野菜は、慣行栽培と呼ばれる栽培方法で育てられています。化学肥料も有機肥料も農薬も使い、特に制約のない栽培方法です。

 

それに対し化学肥料や農薬を一切使わないのが有機無農薬栽培です。
有機無農薬栽培の野菜が一般に知られるようになってきたのは1960~70年代。農薬による人体への影響が叫ばれるようになり、化学肥料や機械耕起の普及による土壌の劣化の危険性も分かってきた頃。
今では有機無農薬栽培には50年以上の歴史があり、ときが経つ中で少しずつ流派ができて、ざっくりと3種類に分けることができます。

 

第一世代「自然農」

 

自然のままに、人の手をほぼ加えない栽培方法です。肥料を一切使わず、管理もしません。耕すことすらせず、自然に生えた雑草の枯れ草を堆肥として使います。
土壌を守るという思想に端を発していて、土に人の手を加えることで土壌が劣化していくという理論を根幹にしています。
肥料をまったく使わないことから、厳密には、有機肥料を使う「有機栽培」と言えないのですが、この自然農の考え方が有機無農薬栽培の起源とされています。

 

第二世代「有機無農薬栽培」

 

自然農では多くの作物を収穫できません。生業とするのは難しい栽培方法です。そんな中、土壌を守るという思想を重視しつつ、生業としたい農業者が実践し始めたのが、有機無農薬栽培です。

生産量を確保するために、有機肥料(落ち葉や家畜の糞)は使用するけれども、化成肥料や農薬など人工的に作られたものは一切使いません。自然農の思想を残しつつ、生産量を上げる要素も多く含んでいます。

化学肥料が存在する以前の農業は有機肥料を使っていたので、昔ながらの栽培方法に戻ったとも言えますね。

 

第三世代「交流重視の有機無農薬栽培」

 

有機無農薬栽培という作り方で作物を作る点は、第二世代と違いはありません。第二世代と大きく違うのは、その理念に「強い自然農哲学」を持っていないということです。

食べ物の安心安全を求め、有機無農薬栽培の野菜を求めるお客さまは増えています。食べ物への意識の高い消費者は、生産者の顔を見たいという気持ちも強いです。

 

つまり、有機無農薬栽培は、消費者と繋がりやすい栽培方法と言えます。

 

第三世代とは、自分の作ったものを「顔を向き合わせて、直接お客様に届けたい!」という想いを持った農家なのです。

 

農家の個性

 

有機無農薬栽培という言葉は2つの意味を持っています。それは、有機栽培と無農薬栽培。この2つは別物です。化成肥料を使っても農薬を使わない農家はいます。その逆もあります。というように栽培方法の種類はもう少し細かく分けられるのですが、その違いは、栽培方法の違いであるとともに、「その人の信念・哲学の違いでもあるということ」なのです。

 

自然のままを好む人はそういった栽培方法を選択しますし、そうでない人はそうでない栽培方法を選択します。まさにそれは、ありのままの自分の生き方だったり、社会がこうあって欲しいという想いそのものだったり。

 

組織に縛られない農家だからこそできる自己主張。
自分の信じるものを、作物をとおして実践していく。
それが農家です。